【円・ドル・人民元】外貨で「知」を買う中国  
統制経済では権力が、市場経済ではカネがものを言う。民間から外貨を吸い上げ、国家に集中させる社会主義市場経済の中国は党と政府が一番そのことを知っている。中国が１兆２０００億ドルの外貨準備を使って買い付けるのは米国債やアフリカの油田ばかりではない。米欧の「知的資源」も取り込む。中国はこのほど、米大手企業買収ファンド「ブラックストーン」に３０億ドルの出資を決めた。ブラックストーンのＰ・ピーターソン氏はニューヨーク・ウオール街の重鎮で自動車産業など劣勢に立った米大手企業建て直しの戦略家でもある。クライスラー買収を決めた投資ファンドのサーベラス代表で前米財務長官のＪ・スノー氏とピーターソン氏はコーポレート・ガバナンス（企業統治）推進の総本山「カンファレンス・ボード」の共同議長である。ブラックストーンへの出資は議決権なし、つまり「物言わぬ株主」で４年間は売却しない。中国はピーターソン氏を通じて効率良く、米産業界に「資金面で再生のお手伝いをする」というメッセージを送った。ピーターソン氏にはもう一つの顔がある。ワシントンのシンクタンク、「ピーターソン国際経済研究所（ＩＩＥ）」のオーナー会長である。ＩＩＥは１９８５年９月の「プラザ合意」後、ドル安円高路線を理論面で支えてきた。ことし３月には１ドル＝９０円、２０％以上のドル安が必要とするリポートをまとめた。円を人民元と同時にドルに対して大幅に引き上げる提言で、事実上、人民元と日本円の同時大幅切り上げを求める米議会内の声を後押ししている。米財務省のポールソン長官は「円相場は市場実勢で変動している」として円安を容認する一方で、中国当局が介入により管理している人民元については変動幅の拡大を求めている。円安には歯止めがかからないのと対照的に、人民元は小幅ながらも変動幅を拡大し、小刻みに人民元を切り上げてはいるが、議会は満足しない。中国はワシントンの目を人民元からそらし、「安い円」に向けさせたいところだろう。中国の外貨準備は一日当たり１５億ドル以上の割合で増え続けている。ブラックストーンへの出資額はわずか２日で調達できる。しかも北京の党中央の裁量で思う存分に使えるのだから、機動性に富んでいる。中国はスーダン、ナイジェリアなどアフリカ産油国で投資を増やしているが、欧米はこれらの国々の人権抑圧や武力弾圧を問題視し、中国を牽制（けんせい）している。中国はこれにも動じない。香港科学技術大学のＣ・ホルツ教授は最近、米誌「ファーイースタン・エコノミック・レビュー」で「中国専門家はすべて買収されているか？」という論文を発表し、欧米の中国専門家の多くが「中国共産党の歓心を買おうと努めている」と暴露した。中国専門家は党の協力が得られないと情報が入らないという弱みに加え、中国側の積極的な「買収工作」も受けている。中国政府や国有企業は欧州の安全保障専門家や政府関係者に資金を出して北京での国際シンポジウムに招待する。ベルギーやフランスなどの有力シンクタンクには資金支援したり、出資している。１９８０年代後半からのバブル期の日本は、米国との通商摩擦に直面したが、日本企業はニューヨークを象徴するロックフェラービルやハリウッドの大手映画会社を買収するなど、米国民の警戒心をあおった。中国も国営石油会社が米石油大手の「ユノカル」を買収しようとしたが、議会などの猛反発で断念した。その教訓を生かしたのだろう。北京指導部はポールソン財務長官に対して米国債は売らないことを約束し、ドル資産の多様化で協力を求めた。忍び足で歩く。しかし、その達成目標は実にうまく計算されている。
