ヘーゲルの哲学を喜び思をプラトンに潜め情をアウグスチヌスに養い遠く古哲の精神に接して大成を他日に期するものの如し。青年は即ち君なりき。君の記憶は深く我心の歴史の中に織込まれて、君の記憶は長く我魂の竪琴に一つのメロディーを奏ずるなるべし。君は学者として立つに十分なる思索の深さと鋭さを有し、君の哲学の根底、君の心の底には或物があった。ソフォクレスの戯曲の中に見るような暗い運命が君の心の奥を支配していた。君はかくの如き暗い力に動かされると共に一面に明かな透徹した頭をもっていた。かくの如き人が深き心の苦悩に陥るのは自然の成行である。唯君が相当に書物も読み見識もあり天性俊敏にしてずば抜けた学生であった。唯我らが君を偲ぶよすがとする。永遠の過去から永遠の未来へ去り行く時の流、虚幻の世、人の世に人ほど貴きもの、我らの生涯の軌道の上に映じ来れる美しき星の光、余光を我らの生涯の上に留めたいと思う。アリストテレスの形而上学が思索に新な生命を与えるようになった。近代哲学の考え方に行き詰った結果、もっと広い自由なる立場を求めて古代の哲学に返った。アリストテレスの考えた実体という如きものは近代哲学の立場からは抽象的か、それは極めて包括的、すべての方面に貫通せる彼の組織力の偉大さに敬服した。彼の書から多くのものを学び得た。プラトンの哲学の底、死とは何ぞ、生とは何ぞ、永遠の生は何処に求むべきであるか。プラトンのイデヤというのは色々の意味を有っている。古来考えられた如く永遠不変なる形而上学的実在として真の原因という如き意味、真理の標準という如き意味、ソクラテスの人生問題に源を発したプラトン哲学のイデヤは固、実践の意義を有し、それから色々の問題に触れ色々の意味を包み込んだと考えられる。何処まで行っても基調のまま、善のイデヤに始まって善のイデヤに終ったという如き見方もできる。ダイモニオンの声を聞き得たソクラテスにはソクラテス的イロニーの態度で良かったであろう。深い思索の力と芸術的直観に恵まれていたプラトンはイデヤを見出した。哲学的思索の根源たるエロスはダイモニオン、イデヤは永遠なる生命の内容として見られる。
